天路の旅人・・・
今回は久しぶりに、ワクワクした本の話。
本の題名は「天路の旅人」作家は沢木耕太郎だ。
1月初めに放送された、NHKの「クローズアップ現代」の本人インタビューで、偶然この本の存在を知った。
沢木耕太郎は私の好きなノンフィクション作家で、若い頃は「深夜特急」に心を踊らされた一人である。
その彼が取材含め25年の歳月をかけて、書き上げたという「天路の旅人」は、西川一三さんという破天荒な旅人が主人公だ。
西川さんは、第二次世界大戦末期に日本陸軍の密偵として、中国内蒙古から大陸奥地へ潜入し、終戦後もインド、ネパール、ブータンなど8年に渡って旅を続けた人物で「天路の旅人」は、その様子を克明に追い続けたノンフィクションである。
それ以上の詳しい内容はここでは触れないが、沢木耕太郎は私が憧れていた作家だったので、その彼が憧れる人の人生って「一体どんなものだろう?」と凄く興味があった。
私が本当に凄いと思い、心から尊敬出来る人は、頭のイイ人や知識の豊富な人ではない。
自分の人生を賭けて、誰もが成し得ない凄い経験や体験をしてきた人だ。
この本は、西川さんの旅の様子を克明に綴った記録というか日記のようなものなので、推理小説のようなドンデン返しやドラマチックな展開を期待している人には少し物足りないかもしれない。
しかし、そこには胸に迫るリアリティーがあって、その情景が目に浮かんだ私は結構ハマった。
私自身、若い頃から海外には興味があり、通算すると30年以上海外で暮らしてきた。
そして仕事も含めると、今まで40カ国以上訪れたが、残念ながら彼のような破天荒な旅はひとつもない。
私にはとても真似出来ないし、素直に憧れる。
イヤ、強いて言えば私も20代前半、ろくに英語も話せないのに10日間ほどシンガポール・マレーシア・タイを一人で旅した時は、ドキドキハラハラの連続で、今振り返っても人生で一番無謀で印象に残る旅だった。
旅はとどのつまり、未知の世界への好奇心から始まり、人生そのものだと思う。
そこでまた一つ、思い出したことがある。
私が青春時代に影響を受けた本で「サハラに賭けた青春」と「サハラに死す」上温湯隆氏の手記がある。
私は数年前から断捨離の一貫として、かなり多くの本を処分したが、気に入った本は今も本棚に残している。
発行日は昭和50年だから、50年近く前の本だ
今この「ブログ」を読んでいる人で、この本と彼の名前を知ってる人は多分いないだろう。
それぐらいレアーな本だと思うが、彼と私は偶然同い年で、この本は私の青春時代のバイブルだった。
彼は高校を中退し、アルバイトをしながらお金を貯め、2年以上もアフリカ大陸をヒッチハイクで旅したツワモノだ。
そして二度目は、ラクダでの「サハラ砂漠単独横断」に挑戦し、道半ばで亡くなった。
確か、22歳だったと記憶している。
当時の私は彼の影響を受け、本気でアフリカへ行きたいと思っていたが、それは叶わなかった。
この機会に再び「サハラに賭けた青春」をゆっくり読み返そうと思っている。
「天路の旅人」とは、訪れた地域も時代背景も全く違うが、多くの共通点を感じたので、読んでいる途中で彼のことを思い出した。
私は幾つになっても心が躍る、冒険ノンフィクションが大好きです。