「美と殺戮のすべて」・・・
今回も前回に引き続き、お花見と映画の話。
日曜日に今年二度目のお花見を、大阪自宅マンション前の公園で行った。
桜が満開で、絶好の花見日和だった。
満開の桜、随分と平和な風景である
また前回の「オッペンハイマー」に続き、2022年にアメリカで公開された映画が、現在大阪でも上映されていることを知り、興味があったので昨日散髪の後で観に行った。
それが今日の「ブログ」のタイトル「美と殺戮のすべて」である。
「オッペンハイマー」同様、事前に詳しい予備知識はなく、観るまではアメリカでオキシコンチンにより、多くの人が中毒症状に陥って、亡くなった背景を深掘りする映画だと思っていた。
ウィキペディアによると、オキシコンチンはオピオイド系の鎮痛剤のひとつで、アヘンに含まれるアルカロイドのテパインから合成される半合成麻薬とのこと。
オキシコンチンは、現在日本でもガン患者の疼痛緩和治療薬として使用されているようだが、厳格に管理されていて簡単には手に入らない。
一方アメリカでは、痛み止めとして利用されており、処方箋があれば街の薬局で簡単に入手出来、120万人以上の人がオピオイドを乱用し、過剰摂取で大勢の人が亡くなっている。
要するに普通の痛み止めに、常用性の高い麻薬をぶち込んで、麻薬漬けにしているわけで、今日本で大騒ぎしている紅麹云々どころの騒ぎではない。
私は以前から、その実態と背景に興味があったのだが、映画は女性写真家のナン・ゴールディンの活動を追ったドキュメンタリー映画だった。
当時のサブカルチャー、エイズやLGBTなどのテーマと一緒にオキシコンチンの薬害を取り上げていたが、実態の解明というより、製薬会社パーデュー社のオーナー、サックラ一家から多額の寄付を受けた有名な美術館の責任を追求する活動が主題だった。
具体的には、サックラー家がオピオイド系の鎮痛剤で得た莫大な利益の一部で、ルーブルやメトロポリタン、グッゲンハイムなどに多くのアート作品を寄贈したが、多くの薬害被害が出た後も、美術館にサックラー寄贈のプレートが残っていることに彼女らは反発して撤去を求める。
そのあたりのことは、私もよく知らなかったし、そこでようやく映画のタイトル「美と殺戮のすべて」の「美」の部分の意味を理解した。
そして彼女らの活動のお陰で、最終的には世界中の美術館からサックラー家のプレートが撤去されるのだが、その時私が感じたのは、人間どんなに金持ちになっても、最後の最後は文化的な事業や社会貢献をして、歴史に名を残すことで自己満足したいようだ。
マフィアのボス然り、彼らも罪滅ぼしの意味含め、晩年にはよく地元に病院や学校を建てたり周辺道路を整備したりする。
そういえば確か「ゴットファーザー」もそうだった。
これは政治家も同じようで、和歌山の白崎の「ログハウス」へ行く高速道路も、誰かさんのお陰で随分綺麗に整備されているといえば、少々言い過ぎか・・・。
日本にも、過去のダークな部分を隠すための善意があちこちに存在していることを、改めて思い起こさせてくれる映画でした。