映画「ロストケア」を観て・・・
映画「ロストケア」を観に行った。
大阪でも二カ所でしか上映していないマイナーな映画だったので、知らない人も多いと思う。
「ロストケア」は、高齢化社会における深刻な課題を、殺人犯と検事の激突という形で映画にした作品だが、楽しい映画ではないので、観たくない人もいるはずだ。
しかし、認知症や介護の問題は、誰もが避けて通れない身近なテーマでもある。
映画のあらすじは、連続殺人犯として逮捕された松山ケンイチ演じる介護士は、認知症によってすべてを忘れてしまった老人と、その介護に生活を破壊されている家族を救うため、巧妙な手口で犯行を重ねる。
そして彼は、自分のした行為は「殺人」ではなく「救い」であると主張する。
また、家族の絆が呪縛になっているとも・・・。
数年前、どこかの介護施設で実際にあった事件を彷彿させるストーリーと展開だ。
認知症の家族を介護する家族の苦悩が、リアルに描かれていて、実際同じような状況に直面している人も多いだろう。
また、老老介護の末、悲惨な結末を迎えた事件も後を絶たない・・・。
「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」という一説が聖書にあり、そのフレーズが映画の冒頭で流れるが、どうもそれがこの映画の肝というかキーワードのようだ。
彼は認知症の父親の介護で生活が破壊され、最後は誰かに自分の父親を殺害して欲しいと願うが、叶わず自ら実践することになり、同じように家族の介護に苦しむ家族を救うため、次々と犯行に及ぶ。
長澤まさみ演じる検事が、命の大切さと説いて鋭く追求するが、彼の反論にも説得力があり、白熱した二人の議論がこの映画の最大の見せ場だろう。
「命とは?」「人間の尊厳とは?」「正義とは?」など、考えさせられることはたくさんある。
とはいえ最後の最後まで、重くて暗い映画だったが、そんな中、主演の長澤まさみの迫真の演技に魅了された。
彼女はバラエティやCMで、コミカルなイメージが強かったが、本気で演じれば凄い女優さんだということがよく分かって、遅まきながらファンになりました。